2020年08月26日

第23回「インスタグラム・ハウス」

1.「こんなふうにしたいのですが!」

 最近は、お打ち合わせの際にインスタグラムなどSNSの写真を依頼者からスマホで見せて頂くことが増えました。
参考写真を見ながらのお打ち合わせは、建築士としてもイメージを共有しやすくて本当に便利です。
カリブ風とか北欧風と言った曖昧な言葉でのやり取りより確実で、間違いも起こりにくいとも思います。
そこで、写真を提示する際に、より確実に思いが伝わるようなアドバイスをしたいと思います。

2. 写真のどの部分が伝えたい部分なのかはっきり自覚する。

 例えば室内の写真を見せて「こんなふうにしたいのですが」と言っても、その写真のどの部分が気に入っているのか、気に入っていないのかを伝えることを意識してみましょう。
写真は言葉よりも情報量が多いので、写真に写っている室内の形状・デザインなのか、ドアのデザインなのか、床の色なのか、それとも しっくいの壁の風合いなのか、照明器具なのか、自分の好みをはっきりさせましょう。インテリアの写真を見せたい場合、例えば以下のような項目が考えられます。

Point1. デザインの部分
Point2. 色
Point3. 材質
Point4. 素材の使い方
Point5. 照明器具
Point6. キッチン、洗面などの設備機器
Point7. カーテンなどの付属品
Point8. 家具など

 あなたがインテリアカラーの配色について伝えたいと思って「この写真」と言っても、見た側は「モダンデザインが好みなんだ」と誤って受け取ってしまっているかも知れません。

 写真を使うのは便利ですが、「こんなふうにしたい」というアイマイな言葉を使った途端に伝えたいイメージが逆に拡散してしまうということを覚えておいてください。

3. 夫婦間で伝えたいことを統一しておく。

 ご夫婦それぞれが別々のスマホで「こんな風」と言い出すと、設計がいつまでたっても進みません。まず意見の集約に時間が掛かるからです。

 それと、夫婦間で「この写真いいね」と盛り上がっても、いざ上のポイントのようにひとつひとつ確認していくと、案外夫婦間で見ている部分が違っていたりします。大まかな傾向としては、女性はインテリアや色、付属品に目が行っていることが多いのに対して、男性は外観や素材、部品などに注目しているように思います。夫婦間で上記のポイントを一つづつ確認してみてください。ご主人へのアドバイスですが、揉めたときは奥様の意見に従うのが良いかと思います。

4. 予算に合うのか確認する。

 SNSで見た写真の通りに実現しようとすると、ご予算に合わなくなることも良くあります。写真をアップした方は、他を我慢してソコだけはこだわりたくてお金を掛けている「とびっきりの写真」かも知れません。
あれもこれも「この写真のように」と主張すると、見積もりが出た後に、減額!減額!中止!中止!で悲しい思いをしかねません。なんだか家づくりもイヤになってきた・・と落ち込む前に、本当に自分たちの生活に必要なのか、有ったほうが良いのか、も考えてみてください。工務店もハウスメーカーも、見積もり作成するだけムダだと思うな・・・と考えながら打合せをしていては気分も上がりません。予算に合わないと思いますよ、と言われたら、一度、金額的に無理をしてもわが家に必要なのか、ご夫婦で検討してみてください。

5. ハウスメーカーの場合

 ハウスメーカーの場合、多くはその会社の「標準」が有ります。標準の素材や作り方から外れるものは「オプション金額」等の名目で追加金額が掛かるのと同時に「やれるのか、やれないのか」という根本的な問題も噴出します。

 使ったことが無い商品や素材を施工させるのは、依頼者にとってもリスクが高いものです。
「やってみましょうか・・・・。」と心もとない返事を聞いても写真通りの施工をさせるのか、あなたならどう考えますか。ハウスメーカーの大工さんの中には、ハウスメーカーの決められた通りにしか工事をしたことが無い方もいます。

 これは町の工務店さんに依頼した場合も一緒ですが、取引口座の無い会社の商品の場合、お互い初めての取引になるので、安い金額では入手できません。ネット購入なら安い、とお考えでしょうが、それをあなたが注文してお金をお支払いになったとしても、それを誰が受け取り、誰が保管し、誰が注文通りか検品し、誰が取り付けるのか、何か有った場合はだれが保証するのか、誰が修理するのか・・・以外に見えないところでコストが掛かっているものなのです。

 ハウスメーカーに「標準」外のことを注文したい場合は、揉める前に素直に営業担当者に相談して話を擦り合わせておくのが大事です。

6. これからのインスタグラム・ハウス

 SNSの写真を参考にしながら家づくりをすることをインスタグラム・ハウスと名付けてみましたが、
今後の工務店やハウスメーカーは、こういったことに対応できる能力が求められていくと思います。
小回りの聞く町の工務店は可能かもしれませんが、ハウスメーカーはかなり努力をしないと難しいのでは無いでしょうか。「標準」を決めてその範疇で仕事をするから利益が出て、早く安く家が提供出来るからです。

 ハウスメーカーは家という「商品」を売る会社です。例えばコップを作って販売している会社に、商品の一部を変更して欲しい、とかこの写真のような色にして欲しい、などと言われても「その写真に写っている商品を買ってください」と言われるだけでしょう。

 インスタグラム・ハウスに対する要望は今後ますます増え、当たり前のことになっていくでしょう。私達建築設計事務所も、インスタグラム・ハウスに対応できて、かつ腕の良い工務店さんを探して仕事をしていくことになるのかも知れません。

7. 最後に

 家づくりに関してハウスメーカーと工務店の話ばかり書きましたが、家づくりには、設計をする建築士が法律上必要です。家づくりの相談先として、建築設計事務所という選択肢が有ることも覚えておいてください。
 このウェブサイトのトップページに連絡先が表示して有りますので、家づくりやリフォーム、リノベーションについて相談したい方は、お問い合わせください。
posted by 住まいづくりの会 at 17:11| 建築よもやま話